中越現地視察(5) そして上越へ戻る †
山古志村の人びとが暮らす三つの仮設住宅地のほぼ中心に位置するのが、長岡市立青葉台小学校だ。今回の旅の最後の視察地がここ。残念ながら、校舎や体育館の中の様子を知ることはできなかったが、何となくここで公演ができたら一番いいなという気になってくる。
そして、熊澤号に全員乗り込み、上越への帰途につく。ホント、熊澤号にはお世話になった。あの広さがなければ若者衆全員が同行することはできなかった。ドライバー熊さんの心優しい運転も印象的だった。いよいよ中越をあとにしようというとき、チカくんなんかは、もういったい誰なのかわからない表情になっていた。泣くな、チカ!
旅の最後は、米山サービスエリアでの集合写真。いやー、みんな、お疲れさま。いい旅ができたと心から思う。
さてと……、それでは恒例の「反省会」。場所は「ひざまくら」。熊さんは今週2回目らしい。何といっても、料理の目玉は「きつね焼き」。料理をガツガツ、焼酎をグビグビやりながら、芝居談義に花が咲いた。
熊さんのアジテーション。曰く――。
演出として役者に望むことは、演技のうまさといった表面的なことではなく、
劇をやることへの一生懸命さや必死さ。
それはただがむしゃらにやるということではなくて、
中越の子どもたちへの思いや劇に対する熱意が伝わることが大切。
とにかく「一生懸命さ」が伝わればよい。
他人のためではなく、自分のためにやっているのかもしれないが、
「オレはこれが伝えたくて一生懸命やってるんだ」ということを
観客に伝えてほしい。ヘタかもしれないけれど、ウマい・ヘタに
こだわらず、自分の伝えたいことを持っていてほしい。
これに対して、チカくん即反応。
どんなに一生懸命かという必死さを伝えたい。
オレはそれをいつも求めてやっている。
ところが、つむじ曲がりのあまのじゃく、ジョルジオはこんなことを
言い出す。
「一生懸命」は命を懸けると書き、「必死」は必ず死ぬゾと書く。
そんな言葉づかいはできれば避けたい。いずれこの土地を去るかも
しれないが、今の自分にとってこだわりのあるこの土地で、今何かを
やっていることの「楽しさ」が伝わることが大切だと思う。
ヘタでいいから、だからこそ、少しでもウマくなろうとすることにこだわって、
何がわからないけど、とにかくやってみよう。
かくして、「反省会」は大舌戦へともつれこむ。名言のいくつか。
- オレは、役者のプライド、魂を大切にしたい。
役をしてたら汗もかく、息も切れる。
だが、汗をかいていたとしても、それを感じさせない演技がしたい。
それを見てもらうことで、「一生懸命さ」が見る側に伝わるはずだ。
[by サトシ]
- 芝居を作るって、ぶつかっていいんですね。これからやる芝居のビデオを
見るって、コワいことなんですね。おー、こえ〜! おもしれ〜! やってる
ことがすっごくあやういことに思えてきた。
[by チカ]
- 今回、芝居に参加したのは、自分の何かを変えたかったから。何かを変えていこう。
これは一種の革命ですよ、自分の中の。
[by フルコ]
若い人たちとの交流の中で、私も自分の何かを変えていくことができればいいナと
思っているが、はたしてどんな具合に展開していくことだろうる
かくして、最後は熊さんと二人、誰かが飲み残した焼酎のオンザロックを半分ずつ分け合って乾盃。先は長そうでもあり、また、短そうでもある。
ジョル 「ではまあ、一生懸命、必死にやりまひょ!」
熊さん 「いや、こうなりゃ、とことん楽しむのだ!」
ジョル 「しかし、役者のプライドと魂が……」
熊さん 「ははは。一種の革命なのだ!」
ジョル 「お〜、こえ〜! おもしれ〜」